

都心から数時間
列車に揺られ阿武隈へ
長閑な景色が拡がる
何処か懐かしい日本の原風景


名残の紅葉
寒桜
真っ青な空



集落を走り継ぐ
何世代にも渡る時の承継
生命は流れ
紡がれて往く




暖かなお日さまに照らされて
一漕ぎ一漕ぎペダルを踏む
小石を踏みしめ
泥道を掻き分け
一漕ぎ一漕ぎペダルを踏む
汗が滲み
喘ぎながら峠を目指す



路の途中
杉林の向こうに
大きな樹
見上げると
まるで山の主のよう
その幹の太さと云ったら!
暫し佇み
生命の息吹にふれる
身体に籠っていた邪気が
汗と共に流れ出し
清らかな山の気に満たされる
そして
深い充足感
サイクルツーリングの賜物をいただく

古の人々はその気を感得し
畏れ恐み御神名を奉ったのだ
それは
静かに静かに
私を清め
密かに密かに
私を満たす

雪の残る名も無き峠
地面も凍る名も無き峠
熱いのは己のこころ
生命の火が燃えている






輪友は有難いものだなぁ
共に走り
共に食らい
共に眠る
他愛もない話
深刻な話
助平な話
同じ時間を共有する
密度も喜びも大きくなるなぁ



車の往来も絶えた旧き路
陰影に彩られ
訪れる人も無く
静かに時が過ぎて往く





生命の輝き
寒空の下
深紅に燃え上がる
精一杯に生命を咲かせ
精一杯に散って往く
私の生命は
精一杯に咲いているだろうか
精一杯に散って往けるだろうか


旅の終わりに大海原
潮風がビュンビュン吹き抜けて往く
火照った身体と心地良い疲労感
う~ん
良い旅路だった
笑顔で送り出してくれた妻へ感謝
輪友へ感謝
小さな車輪にも感謝
そして
阿武隈に感謝


