魚野川水平歩道
群馬県野反湖から新潟県秋山郷へと続く山岳路
秘境と呼ぶに相応しいその路
その前半
愛車は重い荷物と化し
旅人を苦しめる
エスケープルートは無く
脚を踏み入れたならば
前進か撤退の2文字しかない
半端な気持ち心構えでは行くべきでは無い場所
周到な準備と山岳サイクリングの経験が必須な場所
そう 来る者を選ぶ場所
それが魚野川水平歩道なのかも知れない
山中の峠を越え
山の頂きを踏む
長い押し担ぎに耐え
冷たい瀬を渡り
急斜面を押し下り
走り 転ぶ
雨に打たれ
汗まみれになりながら
黙々と前へ
長時間の苦行の後
そこには
極上の路が待っていた
濃密な時間と
深い充足感をもたらす
魚野川水平歩道はそんな路であった
2日目
渋沢ダムを目指して
前日の天気予報とは裏腹に晴れ間が見えた
6時40分 登山道へ 小雨がパラつく
7時 ハンノキ沢
ひたすら押し、担ぐ
小休止はマメに取った
休んだ後は押し、担ぎである
7時45分 北沢取水分岐 間違えやすい分岐はこれだけだろう
ここは堂岩山方面へ 右の木杭にはうっすらと秋山の文字が見えた
8時5分 地蔵峠
石仏に手を合わす
渋沢ダムまで乗れる処はそれほど無かった
自転車の手渡しリレーをしなくてはならない場所が2箇所あった
深く切れ込んだV字型のカラ沢
一人だと愛車をタイヤとフレームに分解 細引きで荷降ろし、荷揚げか
ちなみに↑写真はその場所では無い 簡単な部類の場所だ
8時30分 北沢 上手く渡渉出来る場所が無いため素足で渡渉
魚野川水平歩道はそれなりに覚悟が要る場所であろうが、我々はずっと緊張していた訳では無い
身体に溜った毒を汗で流し、お山の気を全身に浴びる
、話ながら、笑いながら、押し担ぎ、笑みの絶えない道中であった
植生が変わり白樺が増えた
10時5分 野反湖が見えた
10時54分 イタドリ沢
11時38分 再び野反湖が見えると西大倉山である
西大倉山から700mほど一気に下る
百二十曲がり と呼ばれるキックバックの連続であった
処々乗れはするが乗車率は低い なかなか堪える押し下げであった
雨が本降りに、だが木蔭の下で助かった
雨に濡れるまでも無く、汗でグチョグチョであったが・・・
1時前 反対方向から 軽業師 デモ鳥さん が登場!
相変わらずのサンダル履き・・・おまけに空身で・・・
勾配が緩むと、長かった押し担ぎも終わる
大倉坂と呼ばれる辺りか
ここまで来ると渋沢ダム・東電避難小屋は近い
1時30分 渋沢ダム 大休止 雨は上がった
6時40分に登山道へ入り、ここまで7時間弱
小休止多数、中休止数度は取っていた
ペースとしてはかなり遅い部類であろう
極上の路 水平歩道
2時15分 水平歩道へ
すぐに第一トンネル
前半線に比べると何と楽なことか・・・
日が差し始めた 走る路は極上の地道である
水平歩道はその気になれば、野反湖を早朝出発、当日中に津南まで抜けることが出来る
しかし、この路は じっくりと 味わうように 走る方が良いように思う
時間に追われて通り過ぎるように走るので無く
しみじみと ペダルの一漕々々を感じながら、時間を掛けて走るに値すると思う
枝沢に咲く紫陽花や
名も知らぬ花
日の光を浴びて燃え上がる樹々の生命感
その山の生命に抱かれて走る喜び
そして、今ここにあることへの深い感謝
馬ノ背トンネルを登り返すと
甘露水である
沢水も飲んだが皆旨かった 水が豊かである
水平歩道も後半戦になるとスケール感が出て来る 大岩山に月夜立岩
走り始めはすぐそこにあった魚野川も遥か彼方に・・・ 愛車のすぐ向こうは千尋の谷・・・
何かにつけて止まると・・・
いいねぇ・・・来て良かった・・・最高だぁ・・・賞賛の声、感嘆の声が
何も云うことは無い・・・
遠くに切明温泉が見えて来た
さらにトンネルを抜け・・・
岩場を渡り・・・
うんざりする押し下りをもう一度すると
ようやく下りて来た
WTの地道を走り終わったのは4時40分だった
都合10時間
その内押し担ぎの前半線に7時間弱、後半戦の水平歩道に3時間ほど掛かりました
我々は休むと話が長いです
全部で7時間ほどで走破される方が多いようですネ
水平歩道は再訪問しても良いなぁと思える路でした
ただ、アプローチが遠い、切明温泉から始めても押し担ぎがあるなどで
美味しい部分だけを楽しむ訳にはいかないようです
秋口に水平歩道だけ楽しもうにも前述のごとく押し担ぎ付き
それに、水平歩道は北側の谷間なので
午前中の紅葉の綺麗な時間帯は蔭になりますし
西日の頃には綺麗でも、帰りが危ないでせうか
一筋縄でいかないのが水平歩道の良さかも知れませんネ
日本の美を
日本の美しさを
深く々々感じ入った
山岳サイクリングであった
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